あらすじ
――女神の勘違いによる強制送還と、パシリ高校生の死。その二つが、同時に起きただけの話だ。
異世界を統べた絶対企業の覇王・トールは、女神の善意という名の暴力で、愛する家族もろとも元の世界へ送還されかける。だが強制転送のバグを突き、瀕死の高校生・佐藤徹の肉体へ意識を割り込ませることに成功する。残り十二秒。かろうじて命を繋いだ彼を待っていたのは、「クラフト」という不遇ギフトを理由に、クラスメイトの荷物持ちをさせられる日々だった。
――だが、なめてもらっては困る。かつて世界のシステムそのものをハッキングし、支配した男だ。素材さえあれば、国家最高峰の装備すら鼻歌交じりで凌駕してみせる。
目立ちたくない。暴れたくない。今度こそ、妹と交わす平凡な朝食のような、ささやかな日常を守りたい。そう願うトールをよそに、彼の「正体を隠したつもりの無自覚チート」は、静かに、しかし確実に周囲を侵食していく。
無自覚に評価を爆上げされる同級生、突如目をつけてくる国家調査官、そして「これを凌駕する装備を」と直談判してくる、生真面目すぎる剣士ヒロイン――。
平穏を望むほど、平穏から遠ざかる。渋谷の裏路地から始まる、正体隠し系クラフトファンタジー、開幕。