あらすじ
もしかしたら、季節はずれかも……。
──私は、ガラス細工のようにきらきらと輝く、そんなかき氷が昔から大好きだ。
高校二年生の夏休み。瀬戸月夕奈(せとづき ゆうな)は、祖父母の営む古いかき氷屋『天氷堂(てんひょうどう)』を手伝う日々の中で、少しだけ気にかかる「時間」があった。
毎日、午後十六時。
決まってお店にやってきては、いちご味のかき氷を、まるで時間を惜しむようにゆっくりと眺めながら食べる少年、松倉時雨(まつくらしぐれ)。
長い前髪の隙間から、どこか寂しげな瞳を覗かせる彼に、夕奈は持ち前の明るさで不器用に声をかける。
「あの……ぼ、僕の、話し相手に、なって……くれない、かな」
二人きりのカウンターで過ごす、かき氷が溶けるまでの短い時間。
おしゃべりを重ねる中で、夕奈は時雨の抱える深い孤独と、生まれつきの身体の弱さを少しずつ知っていく。
「人間なんて、おもちゃみたいなものだから」
そうやって心を閉ざす彼を、夕奈の温かい優しさがじわりと包み込んでいくけれど、八月の終わり、残酷なタイムリミットが二人に告げられて───
ひと夏だけの、切なくて、でも誰よりも真っ着くなタイムリミット・アオハル。