あらすじ
魔王を討ち、世界を救った勇者アルトは、死ねない身体になっていた。
仲間たちは皆、歳を重ね、アルトを残してこの世を去った。それから三百年。英雄として語り継がれる一方、誰も彼の本当の名前も、仲間たちの笑顔も知らない。アルトは人里離れた丘で、かつての仲間たちの墓を一人守り続けていた。
そんなある日、祖父を亡くした少女セナが、古びた一冊の手帳を持って現れる。
それは、三百年前に死んだ聖女リゼが、アルトへ残した最後の手紙だった。
「私たちを忘れないで。でも、私たちのために生きるのはやめて」
過去に縛られ、墓だけを守り続けてきた勇者と、未来を失った少女。
二人の出会いが、三百年止まっていたアルトの時間を、再び動かしていく。
これは、世界を救った英雄の物語ではない。
大切な人を失った一人の男が、もう一度「生きる」ということを見つける物語だ。