あらすじ
夜だった。
とあるアパートの一室で、男は大きく息を吐いた――人生最後の息を。
部屋の照明は点けておらず、ただ習慣で点けていたテレビの画面だけが場面が切り替わるたびに明滅していた。
ドアに背を預けたまま、男はゆっくりと腰を落としていく。
喉にぐっと圧力がかかった。ドアノブと首を結ぶ延長コードが張り詰め、首の肉に深く食い込みながら気道を塞いで呼吸を奪っていく。
しばらくそのまま俯いていた。やがて胸が空気を求めて大きく上下し、腰がびくんと跳ねた。尻は床からわずかに浮いており、両足は投げ出されている。踵が床を擦るたびに、乾いた音がかすかに響いた。腕はまだ動かせるはずだが、手の甲がことりと力なく床についていた。
無意識に開いた口から漏れるのは、行き場を失ったように喉の手前で鳴る、ひどく頼りない音だけだった。