あらすじ

『男気の虫』 『男気の虫』 「男なら、助けてやれよ」 その一言から、すべてが始まった。 真面目で気の弱い青年・直人は、ただ普通に幸せになりたかった。仕事をして、借金とは無縁の生活を送り、いつか好きな人と家庭を築く――それだけでよかった。 しかし、友人から金を頼まれたことをきっかけに、直人の人生は狂い始める。 「仲間だろ?」 「ここで逃げるのか?」 「男気を見せろ」 断れば、卑怯者になる。 助ければ、金を失う。 そして直人は、博打へと引き込まれていく。 最初は勝った。 だから、もっと勝てると思った。 負ければ「取り返せ」。 借金をすれば「男なら責任を取れ」。 金を手にすれば、人が群がる。 まるで、血を吸う寄生虫のように。 直人の周囲から、本当に彼を心配する友人だけが一人、また一人と離れていく。 残ったのは、金を求める者たちと、膨らみ続ける借金。 やがて直人は、やりたくもなかった犯罪に手を染める。 仲間とともに行った窃盗。 しかし――逮捕されたのは、直人だけだった。 「そんなこと、頼んでいない」 「勝手にやったんだろ?」 仲間たちは、蜘蛛の子を散らすように消えた。 金もない。 仲間もいない。 愛する人もいない。 残ったのは、莫大な借金と、消えることのない罪。 そして刑務所の中で、直人は気づく。 「男気を見せろ」という言葉は、誰かを助けるための言葉ではなかった。 それは、人間に寄生し、金も人生も吸い尽くす――呪いだった。 そして今日も、耳元で声がする。 「男気を見せろ」 その声は、もう誰かの声ではなかった。 直人自身の声だった。

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小説を読もう2026/08/29
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