あらすじ
もし、かぐや姫が実在したとしたら。
そこには、遥か彼方の「月」を信仰し、月にまつわる古い祭祀を代々受け継いできた、一族の血脈があったのではないか。
――この物語は、そんな一つの「空想」から始まった。
舞台は延暦十九年。
富士の山が灰を降らせ、平安の都がいまだ混乱の中にあった時代。朝廷は、「民を安心させる何か」を求め始めていた。
その頃、新羅の海辺の村では、月の祭祀を受け継ぐ少女・香弥が、古くから一族に伝わる秘密に触れようとしていた。
都と海。
朝廷と古い信仰。
遠く離れた二つの場所で始まった出来事が、やがて「かぐや姫」という一つの物語へと繋がっていく。
古代の記録、今に残る神話、そして当時の人々の暮らし。
それらを忠実に再現するのではなく、「誠実に」読み解き、ひとつの物語へと落とし込む。
なぜ、月なのか。
なぜ、竹から生まれたのか。
そして、かぐや姫の正体とは、一体何だったのか。
千年以上の時を越えて残された物語。
その誰も語らなかった「裏側」へ。
あなた自身がその時代を生き、歴史の裂け目を目撃する――
『竹取物語』を、古代日本の海上交流と失われた月の信仰から描き直す、歴史幻想譚。