あらすじ
「わたしは舞を、失った。」
戦乱の世。若き舞手・蓮阿弥は、ある一言をきっかけに舞台を追われ、一座を去る。
行き着いたのは、かつて想い人と過ごした荒れ果てた屋敷。
そこで蓮阿弥は、帰らぬ人を待ちながら、月夜の下でひとり「井筒」を舞い続ける。
やがて、その舞を見るため夜ごと人々が集まり始める。
野盗も、足軽も、殺し合う者たちさえ武器を置くほどに。
しかしある夜、舞手は刺される。
それでも翌晩、月が昇ると舞は始まった。
舞って、待って。
舞って、待って。
死してなお終わらない舞を、旅の祓士カナタは見届ける。
室町の戦乱を舞台に、能と「待つ」という執着を描く、和風伝奇譚。