あらすじ

夫の浮気を知ったのは、火曜日の昼でした。

その日の夕方、私は旅装で玄関に立ち、帰宅した夫に離縁状を差し出して、心からの笑顔で言いました。

「今までありがとうございました。おかげで、決心がつきました」

私はカサンドラ。結婚前は王宮の会計監査室におりました。帳簿は正直で、嘘をつくのは人間のほう。人間の嘘は必ず数字に皺を作る——その皺を見つけるのが、私の仕事でした。

三年前、王宮監察官への推薦が来たとき、私は断りました。規定で「監察対象の配偶者は監察官になれない」から。騎士団は監察対象。騎士団長の妻は、なれない。

つまり、あの人の浮気は——足枷が外れた音だったのです。

監察官となった私の最初の担当は、公開の籤で決まりました。引いた札は「騎士団・経理部門」。

規定通りですので。

五年分の帳簿の皺、ぜんぶ伸ばして差し上げますわ。私情は挟みません。ええ、一切。——それがあの人には、一番怖いでしょうけど。

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アルファポリス
アルファポリス2026/08/28
  • 現在の作品夫が浮気したので、感謝を込めて離縁状を差し上げます