あらすじ
「世界が変わったのではない、自分が目をつぶるのをやめただけだ。」
恋に破れ続け、傷つくのを恐れて己の心から逃げ続けてきた「社交界の華」ヴィオラ。
彼女のもとに届いたのは、情熱も波風もない「安全で熱のない」伯爵家次男カールとの縁談だった。
傷つかずに済む未来に流されそうになる中、彼女の視線が捉えたのは、舞踏会の壁際に佇む男——北方の戦場で傷を負い、自らを「避けられる側の人間」として静かに受け入れる正騎士アルヴァン。
追ってこない男の沈黙にすら逃げ場を見出していた己のズルさに気づいたとき、ヴィオラは冷えた紅茶を置き、ペンを握りしめる。
誰かに救われるのを待つ「迷子」のフリは、もうやめる。
これは、逃げるのをやめた女性が、分からない未来へ自らの意志で手を伸ばし、灰色だった世界に静かに色彩を取り戻すまでの静かな物語。