あらすじ
朝起きたら、世界から一つだけ音が消えていた。
いつも聞こえていた、妹・澪の「おはよう」という声。
けれど、家族は誰も澪の存在を知らない。
写真も、記録も、思い出も――すべてが消えていた。
ただ一人、兄の灯だけが覚えている。
笑い方も。
好きだったものも。
一緒に過ごした、かけがえのない日々も。
「どうして、俺だけ覚えてるんだ?」
やがて灯は、一枚の古い家族写真と、母が残した一通の言葉を見つける。
そこに記されていたのは、
――「澪を探さないで」
という、残酷な願いだった。
忘れたほうが幸せだったのか。
それとも、どれだけ苦しくても覚えているべきだったのか。
大切な人を失った少年が、記憶の奥に隠された真実と向き合いながら、もう一度「生きる」ということを見つけていく。
君が見えなくなっても。
君の声が聞こえなくなっても。
君がくれたものは、決して消えない。
これは、忘れることから始まった、
一人の少年と妹の物語。