あらすじ

「あなたは、王太子殿下に相応しくありません」 そう言われることには、慣れていた。 フォルティス侯爵令嬢ヴィオラは、気位が高く、王太子にも臆せず意見する「悪役令嬢」として知られていた。 そんな彼女が招かれたのは、王太子ルシアン・セレスティアの婚約者候補を集めた王妃主催のお茶会。 そこでヴィオラは、誰もが「理想の王子」と称賛するルシアンに、ただ一人苦言を呈する。 「殿下ご自身のお怪我を厭わない理由にはなりません」 完璧で、優しく、国民から愛される王太子。 けれどヴィオラは、その優しさの裏で自分自身を犠牲にしている彼の姿に気づいてしまった。 数日後、なぜか王家から届いたのは、彼女を王太子の婚約者に望む正式な申し出だった。 戸惑いながらも、ヴィオラはその婚約を受け入れる。 恋ではない。 ただ、この人を一人にしてはいけない。 そう思っていたはずだった。 けれど、二人で過ごす時間が増えるにつれ、ヴィオラは王太子としてのルシアンではなく、不器用に笑い、疲れを隠し、誰よりも人を大切にする一人の青年に惹かれていく。 一方のルシアンもまた、初めて自分を「理想の王子」ではなく、一人の人間として見てくれるヴィオラに、少しずつ心を許していく。 しかし、ある日ヴィオラを狙った刃が振り下ろされた。 彼女を庇い、傷ついたルシアン。 その血を見た瞬間、ヴィオラの封じていた前世の記憶が蘇る。 ――かつて、自分を守ろうとして命を落とした侍女。 「私なんて、助けなくていいのよ……!」 誰かが自分のために傷つくことを、ヴィオラは恐れていた。 それでもルシアンは告げる。 「あなたを、助けたかった。それだけです」 互いの傷を知り、二人の距離は少しずつ変わっていく。 そして、古き結界の揺らぎによって魔獣が王都近郊に現れた時。 ルシアンは、かつてのように自らを犠牲にするのではなく、騎士たちに指示を出し、民を救うために現場へ向かう。 「必ず、戻ってきてください」 待っている人がいる。 帰りを願ってくれる人がいる。 その時、ルシアンは初めて気づく。 自分が守りたいのは、国だけではない。 この人のもとへ、何度でも帰りたいのだと。 これは、誰かを守ることに慣れすぎた王太子と、誰かに守られることを恐れていた悪役令嬢が、 「愛する人のためにも、自分自身を大切にする」ことを知る物語。

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小説を読もう2026/08/28
  • 現在の作品【完結】婚約破棄を望まれなかった悪役令嬢は、完璧な王太子の帰る場所になる