あらすじ
別れた恋人のことを、誰よりも知っているつもりだった。
好きなものも、嫌いなものも。
笑う理由も、傷つく理由も。
長い時間を一緒に過ごしたのだから、知らないことなんてないと思っていた。
けれど、彼女がいなくなって初めて気づく。
――自分は、本当に彼女を見ていたのだろうか。
もう一度だけ会いたい。
もし戻れるなら、今度こそ間違えない。
そう願った夜、高橋蓮が目を覚ますと、そこにはまだ自分をほとんど知らない頃の水野葵がいた。
今度こそ彼女を大切にする。
同じ失敗はしない。
知っている未来を変えて、今度こそ二人で幸せになる。
そのはずだった。
けれど、目の前にいる葵は、蓮の記憶とは少しずつ違っていく。
好きなものが違う。
選ぶ道が違う。
知らない場所で笑い、知らない人と出会い、蓮の知らない未来を選んでいく。
そして蓮は、少しずつ気づき始める。
自分が知っていたのは、本当に「葵」だったのか。
それとも――
自分の記憶の中にいる彼女だったのか。
これは、失った恋を取り戻す物語ではない。
一度すべてを知ったつもりになった人を、
もう一度、知らない人として愛する物語。