あらすじ

長野県諏訪市。氷点下の朝、神社の五十段の石段の下で、元高校教師・遠山克巳の遺体が見つかった。教え子を三十四年にわたって支え続け、地域の誰もが「善い人」と呼んだ男である。冷たくなったその右手には、誰のものともしれない黒いボタンが握られていた。  四日後、廃業した町工場の元社長・牧野常雄が自ら警察署に出頭する。  「私が突き落としました。三十四年前に私が殺した女の子のことを、あの人に知られたからです」  事件は解決したはずだった。  だが、疎遠だった娘・千尋と、加害者の息子である中学教師・牧野悠が、それぞれの父の三十四年を掘り返しはじめたとき、供述と噛み合わない事実が一つずつ現れてくる。毎月三万円の送金。事故の六年後に取り付けられたはずの鉄の階段。雪の上に残された、人が一時間座っていた窪み。そして、三十四年前に警察が伏せていた、一片のガラス。  諏訪湖が凍り、氷が割れて盛り上がる現象を、この土地の人は御神渡りと呼ぶ。  割れなければ、下にあるものは永遠に見えない。  二つの家族の三十四年が、法廷でひっくり返る。  全十八話・約八万三千字の長編ミステリー。  ※飲酒運転による死亡事故、遺体遺棄、児童虐待、自死への言及があります。過度に残酷な描写はありませんが、苦手な方はご注意ください。

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カクヨム2026/08/28
  • 現在の作品御神渡り(おみわたり)