あらすじ
人間が絶滅し、獣人種が生きる現代。オウギワシ種の少女シフェルは、高校1年の夏の夜に起きた襲撃事件により家族も帰るべき場所も喪った。暗闇の夜空を生き延びた彼女は、自分を逃がすために犠牲になった兄チヌークの悲鳴を忘れられず、トラウマから心を閉ざし、兄の言動を真似して生きていた。
大学へ入学したシフェルは、莫大な財力と一族を守る防衛力を有したツンドラオオカミ種の交易商、ヴィオネン一族の姉弟と出会う。獣人種特有の発情期による事件を経て、彼女は不器用な優しさと過保護な愛情を見せる弟サヴァルの|番《つがい》となった。
サヴァルの温かい愛情と少し重い独占欲に触れ、死んだはずの兄との再会も果たしたシフェルは徐々に本来の自分を晒す恐怖を克服していく。しかし、最愛に甘やかされる穏やかな日常は、ヴィオネン一族を狙う巨大な蛇の名を冠したアングラ組織によって崩されてしまう。
狼種の統率を崩し、護衛部隊をまとめていた狼姉弟を追い詰めるアングラ組織。かつて自分たちの一族を滅ぼした蛇の牙によって番たちが膝を屈し、血に染まったとき。
「――今度こそ、守ってみせる」
愛する番と彼らの群れを守るため。たった二人だけ生き残った、かつて空の頂点だった猛禽種の兄妹は真冬の高高度へ舞い上がった。極寒の高高度から放たれる最高時速350kmの|急降下《ストゥープ》が、蛇の頭を打ち砕く。
喪失から再生へ。動物の本能と人の理性、そして深い愛情と独占欲。
これは、すべてを喪った孤独な鳥が、狼の温もりによって凍りついた心を溶かし、安息の地で翼を休めてまどろむまでの物語。
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