あらすじ
「名前を落としました」
王都の片隅にある王立遺失物管理局。
そこで働くセイン・アルケットの固有術〈返却〉は、落とし物を本来の持ち主へ返すだけの地味な力だった。
そんな彼のもとへ、ある朝ひとりの少女がやってくる。
彼女がなくしたのは、財布でも鍵でもない。
自分の「名前」だった。
名前だけが空白になった住民証明書。
彼女を知らないという家族。
誰にも見えない「なくなった跡」。
そして、少女の首に押された赤い封蝋。
半信半疑のままセインが少女の名前に〈返却〉を使うと、見たことのない一枚の紙が現れる。
そこに記されていたのは、
「返却対象:名称」
「帰属先:世界」
という二つの言葉だった。
名前を落とした少女は、世界の持ち物でした。
これは、剣でも魔法でも解けない「失くし物」を追う、少し変わった返却士と名前のない少女の物語。
やがて二人は知ることになる。
この世界から失われ始めているのは、少女の名前だけではないことを。