あらすじ

本作は漫画原作脚本です。セリフとト書きで構成しています。 東部戦線、ハドニツァ川。 本隊は渡った。大砲も、荷車も、指揮官も、先に渡った。 残されたのは、所属も練度もばらばらな寄せ集め、千百八十七名。 命令は一つ。夜明けまで、ここで持ちこたえろ。 平民出身の中尉ハンス・シルテンは、その場で少佐に野戦昇進する。 二階級。死んだ者に贈られる階級だった。 「特進の前渡しだ。縁起でもネェ」 彼は野原を見渡して、こう言った。 「掘りましょう」 塹壕を掘り、単発銃を三人一組で回し、守れない陣は捨て、追撃は橋ごと断つ。 そして千百八十七人分の遺書を書かせ、その全員の名を、名簿もなしに覚えていた。 ――五百二十三名を連れて、この男は生きて帰る。 数日後、西の屋敷に、一通の書類が届く。 誰も嘘をついていない。誰も間違っていない。 朝靄の門で「行ってらっしゃい」と言った娘は、それきり、何も言えていない。 そして男の方も、十六年前に一度だけ会った子どもを、まだ探している。

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カクヨム
カクヨム2026/08/28
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