あらすじ
火野旺には、二つの人生がある。
一つは、現代日本の精神病院で治療を受ける患者としての人生。
もう一つは、人を丹にし、怪異が跋扈する狂った世界で生きる弟子としての人生。
精神病院のベッドで目を覚ますと、医師は言った。
「君が見ているものは、すべて幻覚だ」
けれど次に目を開けたとき、火野旺は薄暗い道観の中にいた。
目の前では、師と呼ばれる男が生きた人間を丹炉へ放り込み、仙丹を錬っている。
病院では、彼は治療を受ける精神病患者。
あちらでは、邪法を学ぶ一人の弟子。
薬を飲めば道観が消え、
目を閉じれば病棟が消える。
医師は「病気だ」と言う。
師は「お前こそ悟っていない」と笑う。
ならば、一体どちらが幻なのか。
そしてもし、どちらも本物だったとしたら。
これは、狂った世界で正気を求め、
正気の世界で狂人と呼ばれた一人の少年の物語。