あらすじ
ロイ・アルミュール――十七歳にして、懸賞金一億ドル。
大総統カーディナルは断じる。「慎重で、賢く、無駄なことをしない」。いずれ世界に仇なす、災いの器であると。
真実は、もっとつまらない。
八年間追われ続けた少年が欲しかったのは、人並みの生活ひとつ。偽の戸籍で国を出て、朝起きて、働いて、週末は少し洒落た店で飯を食う。そのささやかな計画が裏切りに潰えた夜――包囲の銃口の真ん中で、少年は啖呵を切った。
「世界を滅ぼす、“災い”に為ってやる……!」
そう、言ってしまったから。
それを嘘には、できないから。
以来、少年はその一言に縛られている。帰る場所があれば焼き、差し出された優しさは断つ。覚悟と呼ぶには軽すぎて、信念と呼ぶには汚すぎる――策謀に見えるそれらは全部、誰にも明かせないガキの意地だった。
味方は、口うるさいハムスターが一匹きり。
だが世界は読み違え続ける。癇癪の痕に緻密な計算を見出し、神話を組み上げ、懸賞金を吊り上げる。積み上がった誤解はやがて質量を持ち――“本物の災い”までもが、少年の啖呵に応え始める。
そして少年は、破滅を望んだ。