あらすじ
「すべて、わたくしがいたしました」
公爵令嬢アレクシアは、婚約破棄の場で一言も弁明しなかった。王太子の恋人をいじめたのは事実であり、彼女は自分が何をしたか正確に知っていたからだ。
七年後、彼女を裁いた王子は、善意のまま国境で判断を誤り、祖国を魔王国に滅ぼされる。燃える王都でアレクシアは死ぬ。
目を開けると、婚約破棄の三日前だった。そして祖国を五度救えなかったという魔王が、六度目の取引を持ちかける。
「私の妃になれ」
アレクシアには、人の悪意が帳簿として見える。誰を踏み台にし、何を得ようとしているのか。宮廷でその力を使って令嬢を潰してきた女は、敵国の宮廷で同じ手を使い始める。買収された役人、偽造された命令書、戦争で儲ける名門家。悪意を暴き、証拠に変え、票に変える。
味方になったのは、魔王国で最も軽く扱われる八つの種族だった。掃除係のスライム、荷運びのオーガ、倉庫番のゴブリン。彼らは記録を残し、数を数え、水路を守る。
ただし《悪意の帳簿》には、善意が映らない。
祖国を滅ぼすのは悪人ではなく、民を救おうとする善良な王だった。