あらすじ
「婚約指輪、売ってもいいか……な?」
結婚記念日の昼下がり。
三児の父にして、筋骨隆々の会社員・田中敦は、最愛の妻・楓から突然そんなことを告げられる。
楓は身長約140センチ。
無口で表情も乏しく、オレンジジュースとご当地ゆるキャラ「にゅらいむ」が大好き。そして何より――人間ではなく、敦を軽々持ち上げるほどの力を持った妖狐である。
そんな少し……いや、ものすごく変わった楓を、敦は結婚して25年経った今でも溺愛していた。
婚約指輪を売ってどこかへ出かけてしまった楓を心配し、街中を駆け回る敦。
やがて帰ってきた楓が彼の腕につけたのは、太陽をモチーフにした一本の腕時計だった。
“MY HEART IS YOURS”――私の心は、あなたのもの。
そして楓の腕には、それと対になる月の時計。
結婚して、子供が生まれて、長い時間を一緒に過ごしても、敦は何度でも楓に恋をする。
そんな結婚記念日から数日後。三人の子供たちから、何気ない質問が飛び出した。
「父さんと母さんって、どうやって知り合ったの?」
二人が出会ったのは、30年前の神社。
まだ若かった敦がそこで出会ったのは、今とほとんど姿の変わらない楓だった。
そして、彼女が敦に初めてかけた言葉は――
「……食べていい?」
これは、熊のように大きなお人好しの青年と、小さくて無口な妖狐が夫婦になり、家族になるまでの物語。
そして30年経った今も続いている、ちょっと変わった? いや、かなりアブノーマルな二人の、とびきり普通で幸せな恋のお話である。
【作品・主要キャラクター補足】
■田中 敦(48)
熊のような大柄な体格をした会社員。
三児の父。よく喋り、リアクションも大きい。
会社では100人以上の部下をまとめる立場だが、家庭では妻・楓を溺愛しており、結婚25年目の現在も「楓さんが可愛い」が行動原理。
■田中 楓
敦の妻である妖狐。身長約140センチ。
小麦色の長い髪を持ち、狐耳のように立った髪が感情に合わせて動く。
非常に無口で表情の変化も小さい一方、怪力の持ち主。
オレンジジュースと、ご当地ゆるキャラ「にゅらいむ」が大好き。
■三人の子供たち
敦と楓の間に生まれた三人の子供。全員小学生。
長男は三人の中で一番冷静で、両親の奇行にも慣れている。
次男はよく喋りリアクションも大きく、性格は敦似。
末っ子は口数が少なくマイペースで、性格は楓似。
■物語について
物語は、敦と楓が結婚して25年を迎えた「現在」から始まります。
第5話を起点として30年前の二人の出会いへ遡り、熊のように大きなお人好しの青年・敦と、人間とは少しズレた感覚を持つ妖狐・楓が、恋をして夫婦となり、やがて三人の子供を持つ家族になるまでを描いていきます。
【記号など補足】
○:場面・時間帯
【人物名】:セリフ
【人物名・モノローグ】:心の声・語り
「――」:場面転換・回想等