あらすじ
著者はこれまで、前漢時代に成立したとされる『爾雅』「釋天」に記された十干・十二支、月名、星名の奇妙な異称に、当時の中国語の音――上古音――を当てはめ、サンスクリットとして解読することを試みてきた。
すると、そこから現れたのは、シヴァにかかわる真言やサンスクリットの音声表らしきもの。
一つなら偶然で済ませられる。
ところが、調べれば調べるほど、それらしいものが次々と現れる。
困惑した著者が次に目をつけたのは、中国古代天文学の基礎をなす二十八星宿だった。
とはいえ、さすがにこれは無理だろう。
二十八宿は、紀元前433年頃に埋葬された曾侯乙墓の副葬品にも記されているほど古い。そんな時代の中国の星宿が、サンスクリットで解読できるはずがない――。
そう思っていた。
ところが星宿の配列を調べていくうちに、一つの疑いが浮かび上がる。
これは、サンスクリット文法学の祖パーニニが用いた「シヴァ・スートラ」の中国版ではないのか?
紀元前5世紀。
それは奇しくも、パーニニが活動したと考えられている時代に近い。
しかも、これまで『爾雅』から「解読」したサンスクリットには、後世に伝わるパーニニ文法とは微妙に食い違う部分さえ存在する。
もしこれが偶然ではないとしたら――。
中国の二十八星宿に隠されていたものは、星座表ではなく、失われた古代インドの音声学・文法学の痕跡だったのか?
偶然か。こじつけか。
それとも二千年以上にわたって正体を忘れられていた、サンスクリット文法書なのか。
二十八星宿の謎を、上古音とサンスクリットから追う。