あらすじ
言葉は、使われなくなると死ぬ。
「蛇笏(じゃこつ)」「逢引(あいびき)」「花衣(はなごろも)」——誰の口にも登らなくなった言葉たちは、やがて人の姿をして街をさまよいはじめる。それらを拾い集め、焚き、灰にして世界に返すのが、死語の火葬場《灯屋(とばりや)》の仕事だ。
高校二年の凪(なぎ)は、死語が「見える」体質のせいで、祖母の遺した灯屋を週三で手伝っている。規則は三つ。燃やす前の言葉を読むな。言葉の声を聞くな。そして、灰に名を尋ねるな。
ある雨の夜、凪は翌日の火葬予約票の束をめくっていて、息が止まるほど冷たいものを見つけた。
予約番号、一万四千七番。 品目、死語。 名称——「なぎ」。
それは彼女の名前だった。届け出た者はいない。届け出られるはずもない。死語になるということは、世界中の誰もが、その名前をもう呼ばなくなるということだ。
名前が燃えるのは、あしたの夕方。 誰が、いつ、どうやって、私の名前を殺したのですか。
——使われなくなることの恐怖を描く、喪失と追跡の現代ファンタジー