あらすじ
愛猫の死を受け入れられず、誰もいないベランダへ餌を置き続ける日々。心のバランスを失った「僕」を見かねた親友の金井康太は、気休めの「猫探し」と称して僕を三浦の街へと連れ出す。
波音の響く街をさまよううち、二人は一軒の蕎麦屋、そして一人の不思議な老人と出会う。静かに流れる時間の中で老人が語る「死」との向き合い方は、凍りついていた僕の心を少しずつ溶かしていく。さらに蕎麦屋の手伝いを通じて出会った一人娘との間に芽生える、淡い恋心。三浦で過ごす特別な時間が、僕の中に予期せぬ大きな決意を芽生えさせていく。
だが、現実に戻れば待っているのは学校生活と、抱えきれない過去の傷。葛藤する僕の前に立ち塞がる壁に、親友の金井はどう向き合うのか。そして僕は、愛猫の死を受け入れ、新しい一歩を踏み出すことができるのか――。
喪失の悲しみに寄り添う人々の温もりと、揺るぎない友情を描く、再生と希望の物語。