あらすじ
昭和六十年、春。
大阪の神楽町という街に、柳龍司という二十一歳の若者がいた。
喧嘩っ早く、考えるより先に身体が動く。
それでも街の人間には愛され、親分・榊宗次郎と仲間たちに囲まれながら、榊組の若衆として生きていた。
龍司にとって、神楽町と榊組が世界のすべてだった。
だが、街の境目で起きた小さな揉め事をきっかけに、その世界は少しずつ形を変えていく。
榊組。
その上にある天真会。
そして、そのさらに上に君臨する巨大組織――天龍会。
親と子。
兄と弟。
看板と意地。
忠義と野心。
守るために頭を下げる者がいる。
上へ行くために牙を剥く者がいる。
そして、つい先日まで同じ大看板の傘の下にいた男たちが、やがて互いの前に立つ。
これは、まだ何者でもなかった一人の若者が、多くの男たちと出会い、失い、その背中を追いながら、自らの道を歩いていく物語。
龍はまだ、天の高さを知らない。