あらすじ
将棋に異様なまでの没入を見せる少女、天羽しおり。
幼い見た目に反して、彼女が盤上で見ている景色はあまりにも深く、あまりにも静かだった。町道場に現れた小さな才能は、祖父や指導者、地元の古参たちを驚かせながら、やがて“本物”として周囲に認められていく。
しおりは大会に出れば負け知らず。前回優勝者を一回戦で沈め、年上の強豪すら容赦なく詰ませる。その将棋は華やかなだけではない。苦しい局面では細い勝ち筋を見つけ出し、勝てると見れば一気に終わらせる冷たさを持っていた。地元では、彼女が負けたところを誰も見たことがない。背に龍の絵が刺繍された羽織をまとい、勝ち続けるその姿は、いつしか“ミニ竜王”と呼ばれるようになる。
だが、しおり自身はただ勝つことだけを求めているわけではない。
勝ってもなお満たされず、彼女は将棋のさらに奥にある何かを探している。なぜ自分は将棋を指すのか。勝ち続けた先に何があるのか。そして、まだ知らない“敗北”の先には何が待っているのか。そんな答えのない問いを胸に抱えたまま、しおりは今日も盤へ向かう。
放課後には町道場で老人たちと盤を挟み、小さな大会では年上の実力者たちを打ち倒し、ついには現役プロの目にも留まるようになる。
これは、幼い少女が無敗のまま将棋界を駆け上がり、やがて高校生にして竜王をはじめとするタイトルをその手に収めるまでの、静かで苛烈な成長譚。
最強を目指す物語であると同時に、自分自身の“指す理由”を探し続ける、一人の少女の物語でもある。