あらすじ
パン屋の娘として、灰を掻き、パンを焼き、客の軽口に笑って、それで満足していたのに。
ある日、宰相様と名乗る人が店にやってきて、こう言った。
「貴女は、王家の血を引く忌子。そして――王女殿下の身代わりです」
もう一人の私、双子の王女様は病で亡くなった。
悪名高いわがまま王女の代わりを務めろと言われても、困る。困るけれど、断れば国が傾くと聞かされては、頷くしかなかった。
わがままに、高飛車に、悪女らしく振る舞わなければならないのに。
疲れている教育係の先生には、つい労りのお茶を淹れてしまう。
横暴な命令のつもりが、護衛の騎士様を気遣う言葉になってしまう。
隣国からいらした王子様には、政略よりも先に、素直な言葉をかけてしまう。
演じているつもりの悪女は、いつまで経っても板につかない。
それなのに――なぜか三人は、私から離れていかないのです。
忌子として生まれ、身代わりとして生きる。そんな私の、隠しごとだらけの一年が始まる。