あらすじ
『標本』
死したものを将来にわたり観察・研究ができるようにした。
死んでもなお美しく、生き続けている。
2026年、初夏。
俺、源 蛍輔(みなもと けいすけ)は地元へと帰省した。
普段は都内で小説家を書き、本という名の『標本』を書いている。
帰省して最初に向かうのはいつもあの場所だ。
緑が生い茂る神社の裏山。その先にある綺麗な小川。
数年前。
地元を離れることになった俺は、彼女をこの小川へ呼び出した。
ホタルが光り輝き、生きるこの小川に。
ホタルは恋愛成就・愛情の象徴とされる。
この場所なら、彼女も首を縦に振ってくれるはず……
だが、彼女は首を縦に振らなかった。
気づいたときには俺の目の前で血にまみれ、倒れている彼女がいる。
彼女は死んでしまった。
__俺が殺した。俺が殺してしまったのだ。
彼女との思い出を腐らせたくない。俺の彼女への想いを、そのすべてを。