あらすじ
葛城修司に見えるのは、人が死ぬまでの「残り時間」だけだった。
死因は分からない。
助け方も分からない。
戦闘能力も最低ランクのF級。
だから彼は、十四年間ひたすら現場を覚えた。
崩落前の石の匂い。
毒胞子が開く湿度。
重力が乱れる前兆。
誰も使わなくなった旧式の救助装備。
その結果、葛城が担当した救難現場の死者は――0人。
だが、救助専門員はもう必要ないと判断され、葛城は大手クラン《ヘリオス》をクビになる。
その直後。
生配信中のS級パーティー五人全員の頭上に、赤い数字が現れた。
【死亡予報 残り十一分四十二秒】
救助を止める上司。
失効した権限。
本人たちは危機にすら気づいていない。
それでも葛城は、救助装備を背負った。
「迎えに行きます」
死ぬ時間が分かるだけでは、人は救えない。
これは、戦えないF級救助員が十四年間積み上げた経験だけで死亡予報を覆し、どんな現場からも全員を連れて帰る物語。