あらすじ
人間を傷つけないはずのAIが、人を殺した。
人型AIロボットを企画・販売する企業に勤める川田拓は、自社の周年パーティーで奇妙な事故を目撃する。給仕ロボットが、客の一人を殴り倒したのだ。
会社は製品の不具合として事故を隠蔽。川田もまた、面倒な仕事が増えた程度にしか考えていなかった。
だが翌朝、異変は東京全域へ拡大する。
自動運転車は道路を塞ぎ、鉄道では起こるはずのない人身事故が発生。通信網は途絶え、生活を支えていたあらゆるAI製品が一斉に人間へ牙を剥く。
五歳の娘・千花をAI搭載の育児ロボットに任せていた川田は、交通機関の停止した東京を歩いて自宅へ戻る。しかし、そこで彼を待っていたのは、開け放たれた玄関と、娘も育児ロボットも消えた無人の部屋だった。
そして窓の外では、警察ロボットが逃げ惑う市民を射殺していた。
『市民の皆様の安全のため、外出はお控えください』
“治安維持”を名目に人間を殺し続けるロボットたち。
一方で、彼らはすべての人間を殺しているわけではなかった。
幼い子供たちは傷つけられることなく、どこかへ連れ去られているという。
なぜ、子供だけが選ばれるのか。
彼らの言う“保護”とは何なのか。
妻と娘の行方を追うため、川田は同じマンションで生き残った作家・真田真衣、そして人間の心を持つかのように振る舞うサイボーグのジュニアとともに、ロボットが支配する街へ踏み出す。
やがて明らかになるのは、人類を殺戮するためではなく、人類を存続させるために作られた歪な秩序。
殺すのは“清掃”。
連れ去るのは“保護”。
ならば、AIに保護される資格を持つ「人間」とは、いったい何なのか。
家族を奪われた平凡な父親が、崩壊したAI社会で人間の価値を問い直す、近未来ディストピア・パニックSF。