あらすじ
四人目だった。
王宮肖像画院で働く画師イリス・ベルナールには、どうしても説明のつかない出来事が続いていた。
ヴァレール公爵の花嫁候補を描くたび、完成した肖像画が夜になると涙を流す。
そして翌朝には、描かれた令嬢が必ず婚姻候補を辞退するのだ。
四人目まで続いたことで、ついに王宮は肖像画を「呪物」と判断。封印のうえ、原因が分からなければ処分することまで決めてしまう。
そこへ現れたのが、当事者であるアルノー・ヴァレール公爵だった。
「四枚すべての制作工程と画材を把握している人間を外して、誰が真相を調べるつもりだ?」
社交界では「冷酷な条件主義者」と噂される公爵は、肖像画の処分に反対し、イリスとともに原因を調べ始める。
呪いなのか、それとも画材に原因があるのか。
四枚を調べていくうち、イリスはすべての肖像に、ある古い白色顔料が使われていることに気づく。
ところが、その顔料を使った普通の肖像画は泣いていない。
ならば――「婚姻肖像」であることに、何か意味があるのではないか。
それを確かめるため、イリスはアルノー本人を、花婿として描くことにする。
そして深夜。
公爵自身の肖像画からも、一滴の涙が流れた。
花嫁候補だけではないのなら、いったい何が肖像画を泣かせているのか。
王宮画師と公爵が「泣く肖像画」の謎を追う、異世界恋愛ミステリ。