あらすじ
「お前もその刀と同じ、価値のない女だ」
卒業式典の大広間で、第二王子ロイドから婚約破棄を突きつけられた鑑定師令嬢アイリス・ヴェルデ。彼女の家が守る『鈍色の妖刀・時雨』は、いざという時にしか光らぬ「役立たずの鈍ら」と嘲笑され、聖剣に選ばれた聖女に彼の腕を奪われる。
だが——涙も見せず頭を下げるアイリスは、心の中でこう呟いていた。
(鈍色に見えてるの、お前らの目が節穴なだけだろ)
前世は三代続く刀剣研師。地金も銘も魔力残量も一瞬で見抜く鑑定眼を持つ彼女には、時雨の真価が見えていた。あれは「散り際にだけ光る」名刀なのだと。
そして時雨には、数百年の孤独に心を閉ざした付喪神・シグレが宿っていた。「俺は誰も守らねぇ。守れねぇんだよ」——ぶっきらぼうで寂しがり屋な彼を、アイリスは毎晩の手入れで少しずつ蘇らせていく。
理不尽な国も、報われない奉公も、ぜんぶ手放す。
父の祝福を背に、アイリスは相棒の妖刀と気の強い侍女ノーラを連れ、国を出る決意を固めた。
手放したものの価値を、あなたはこの先、嫌というほど思い知る——。
鈍色に見えても、磨けば光る。人も、刀も、たぶん同じ。折れかけの妖刀と、追放された令嬢が織りなす、痛快な旅立ちの物語。