あらすじ
午前零時四十四分。
運行図にも建築図面にも存在しない「第0番ホーム」には、明日失われるものが、まだ失われる前夜に届く。
それは「予失物」と呼ばれ、午前四時四十四分までに持ち主へ返せば、予定された喪失を防ぐことができる。
ただし、喪失そのものが消えるわけではない。同じ役割を持つ、別の大切なものへ移る。何を失うかは、返す前には分からない。
遺失物係の日向ユイは、親友との放課後、匿名で歌える居場所、家族に「ただいま」と言える場所、最初にコートへ立つ役割を失おうとする人々に、選ぶための時間を渡していく。
ユイ自身も八年前、母に忘れられる未来を変えた代わりに、弟ソラを世界から失っていた。
残されたのは、弟の名前が記された一枚の赤札だけ。
失う未来を受け入れるのか。別の何かを代償にして守るのか。
誰かの喪失と選択を見届けながら、ユイは記憶から消えた弟の行方へ近づいていく。
失くした昨日は戻らない。それでも、明日の居場所はつくれる。
第0話から第5話までで完結する、選択と喪失を描いた現代ファンタジー連作短編。