あらすじ
朔国東部、東州。
名家・沈家に生まれた沈瑶月は、辺境を守る将軍の父と三人の兄に愛され、何不自由なく育った。
王太子・蕭長淵の妃候補として高等な教育を受ける一方、戦場へ赴く家族の力になりたいと医術を学ぶ、聡明な少女だった。
――あの日までは。
永平十六年。
東州を襲った謎の惨劇によって、沈家は滅びた。
家族を失い、傷だらけの姿で都へ送られた瑶月。
それから四年。
瑶月は長淵の軍に従軍する軍医となり、戦場で人の命を救っていた。
そして永平二十年。
戦後の戦場で、瑶月は一人の男と出会う。
景国の若き将軍――劉晟。
沈家を滅ぼした男として、瑶月が憎み続けてきた敵将だった。
しかし、再会は思いもよらぬ形で訪れる。
瑶月は劉晟に攫われ、敵国の将軍の屋敷へと連れて行かれる。
なぜ自分を攫ったのか。
なぜ沈家を滅ぼしたのか。
問いかけても、劉晟は多くを語らない。
けれど、共に過ごすうちに瑶月は気づいていく。
冷酷非道と恐れられる将軍の姿の裏に、誰にも知られていない優しさと、深い傷が隠されていることに。
憎むべき敵のはずなのに。
知れば知るほど、その人を憎めなくなっていく。
そして少しずつ明らかになる、東州で起きた惨劇の真相。
それは、瑶月が信じていた「敵」の姿を大きく覆すものだった。
三国を巡る陰謀。
滅びた沈家に隠された秘密。
「北幻珠」と呼ばれる幻の存在。
そして、十六年前から密かに動き続けていた運命。
家族も、故郷も、すべてを奪われた少女と、
敵国の将軍として生きる青年。
決して交わるはずのなかった二人の運命が、戦乱の世で交差する。
これは、失ったものを抱えながら、憎しみと真実、そして愛の間で揺れる少女の物語。