あらすじ
佐倉美月は、高瀬凛が嫌いだ。
仕事は適当なくせに結果は出す。
誰にでも愛想がよくて、いつも余裕そうに笑っている。
見ているだけで腹が立つし、できることなら関わりたくない。
――そのはずだった。
なのに最近、気づけば高瀬さんを目で追っている。
今日は誰とランチに行ったとか。
いつもと少し髪型が違うとか。
知らない女と楽しそうに笑っていたとか。
どうでもいいはずのことばかり、なぜか頭から離れない。
他の女といるのを見ると苛立つ。
少し優しくされただけで、その日の夜まで思い出してしまう。
話しかけられなければ、それはそれで気になる。
こんなの、おかしい。
嫌いだから気になるだけ。
嫌いだから目で追ってしまうだけ。
美月はずっと、そう思っていた。
夜、匿名アプリでだけ本音を話せる「R」に相談するまでは。
「最近、嫌いな女のことばっかり考えてる」
返ってきたのは、たった一言だった。
「それ、本当に嫌いなの?」
――違う。
そんなはずない。
高瀬凛なんて、大嫌いだ。
なのにどうして、
あの女が誰かのものになるところだけは、想像したくないんだろう。