あらすじ
【伝説の裏側、英雄たちの栄光を研いだのは――一人の「道具」だった。】
かつて、世界を救った七人の英雄がいた。
その輝かしい叙事詩の陰で、魔力を絞り出される「使い捨ての触媒」として、英雄の剣を研ぎ、傷を癒やし、あらゆる泥を啜った男がいた。名は、ガンドルフ。
「役割」を終えた彼は、聖騎士や賢者となったかつての戦友たちに背を向けられ、辺境の泥濘へと捨てられた。
だが、世界は救われてなどいなかった。
英雄たちが打倒した魔王とは、世界の「熱量」を維持するための巨大な心臓に過ぎなかったのだ。心臓を失い、絶対零度の「静止」へと向かい始めた世界。偽りの平和に酔いしれる民衆と、玉座にふんぞり返るかつての仲間たち。
「……救世だと? 笑わせるな。俺たちがしたのは、ただの略奪だ」
右腕を「鋼鉄の呪い」に侵され、銀色に硬質化したその腕で、ガンドルフは再び錆びついた杖を手に取る。
狙うは、世界の再誕を司る核――概念上の処女「灰色のダルシネア」。
かつての教え子である若き聖騎士が、正義を掲げて立ちはだかる。巨大な魔導兵器が、空を覆う浮遊要塞が、神の名を騙る宗教都市が、男の行く手を阻む。
運命が俺を塵として扱うなら、その塵で奴らの目を潰してやる。
これは、栄光を拒絶した男が、泥を啜り、絶望を燃料にして、神の座へと這い上がる「逆転」の冒険譚。
冷徹なリアリズムと、胸を焼き尽くすようなカタルシスが交錯する、超弩級のハイファンタジー・ハードボイルド。
――行こう。夜はまだ、明ける気配さえない。