あらすじ
辺境の小さな村で暮らす青年カイルは、村付きの結界師だ。
結界師といっても、彼の仕事は壊れた柵を直したり、畑を荒らす獣を追い払ったり、井戸や家畜小屋の困りごとを解決したりすることばかり。
王都では、結界術は「魔物を防ぐ壁を作るだけの地味な魔法」と考えられている。
けれどカイルにとって、結界とはただ何かを遮るものではなかった。
匂いを閉じ込める。
熱を逃がさない。
地下水の流れを変える。
音を反射する。
魔物の進む方向をずらす。
村人に頼まれるまま結界を工夫していたカイルだったが、やがて周囲では魔物の異常な増加が始まる。
そして森の奥で見つかったのは、何者かによって破壊された古代の石碑。
そこに刻まれていたのは、カイルが独学で作り上げてきた結界術とよく似た紋様だった。
迫り来る数百の魔物。
カイルは巨大な壁を作るのではなく、これまで村のために作ってきた小さな結界をすべてつなぎ合わせる。
本人はただ、村を守っているだけ。
けれどその小さな村はやがて――誰にも攻略できない、世界最強の要塞へと変わっていく。