あらすじ
『宿痾』は、父から子へと受け継がれていく「逃げ癖」と罪の意識を描く、家族をテーマにした人間ドラマです。
四十八歳の内装業者・滝澤和馬は、かつて父に捨てられた過去を持ちながら、自らもまた妻と、生まれる前の子供を捨ててきました。
二十年後、彼の前に突然、見知らぬ娘・夏菜子が現れます。
「お父さん」
その一言によって、和馬が長年閉じ込めてきた過去が再び動き始めます。
父親になることから逃げ続けてきた男と、父親を知らずに生きてきた娘。二人の出会いを通して、親子の断絶、孤独、後悔、そして簡単には癒えない心の傷を描いていきます。
題名である「宿痾」とは、長い間身体や心に巣食い、簡単には治らない病を意味します。本作ではそれを、血によって受け継がれるものではなく、「逃げ方」や「愛し方の分からなさ」として描きます。
果たして人は、親と同じ過ちを繰り返さずに生きられるのか。
そして、二十年遅れて現れた家族を、人はもう一度愛することができるのか。
『宿痾』は、過去から逃げ続けた一人の男が、娘との出会いによって自分自身と向き合わされていく、再生と贖罪の物語です。