あらすじ
八月の終わりだというのに、異常な酷暑が続いていた。
六十歳の私は、仕事を求めてハローワークへ通い続けていた。年齢という壁に阻まれ、何度応募しても不採用。老後に待っていたのは、安らぎではなく、社会から必要とされない孤独だった。
そんな帰り道、交差点で五歳ほどの男の子が私を指差した。
「あのひと、死ぬよ」
翌日、男の子は再び現れた。
「まだだよ」
その日から、街の人々がおかしくなっていく。白目を剥き、笑いながら私を見つめる人々。誰もいない駅。乗客全員が白目を剥いて笑う電車。そして、私を待っていた古いトンネル。
そこは「鬼門」だった。
逃げ込んだ先で待っていたのは、妻、ハローワークの職員、そして鏡の中の自分。
やがて私は知る。
八月三十一日は終わらない。
一人が外へ出れば、一人が中へ入る。
誰も死なない。
誰も救われない。
次の一人が見つかるまで、永遠に――。