あらすじ
「欠陥書類ですね」
婚約を破棄され、持参金まで奪われた男爵令嬢アニエスが倒れたのは、王都の小さなパン屋「ホノカ」の前だった。
粉まみれの店主リツは、破棄通知を一目見ただけで欠陥を見抜く。正当事由も、日時も、証人もない。この書類では婚約破棄は成立しない。相手が強行すれば、持参金は三倍返しである。
リツの前世は弁護士。今世でも王国勅許代訴人の資格を得たが、救えなかったパン屋の女性への後悔から、十年間法廷を避けてきた。
侍女の署名、洗濯女の帳簿、職人の印章、焼き型、御者の運行簿。貴族が見下した平民の日常を証拠へ変え、婚約破棄、虚偽離縁、屋号の乗っ取り、文字を読めない子どもへ押しつけられた契約を覆していく。
依頼人がいつも清廉とは限らない。それでも、一つの罪を理由に、契約書にない権利まで奪わせはしない。
やがてリツは、子どもを縛る搾取契約と、本人に会わず「自由意思を確認した」と記された偽りの和解記録へ踏み込む。そして、正式書類を信じる年下査察官セドリックとの関係も、敵対から共闘へ変わっていく。
焼きたてのパンで人を立たせ、契約書と証言で悪党の逃げ道を塞ぐ、事件ごとに決着する法廷ざまぁ×お仕事×じれじれ身分差恋愛。
※全50話完結まで執筆済み。児童搾取、家族への威迫、強制契約を扱います。