あらすじ
「心配するな。俺は天才だからな」
事実、久世玲司は天才である。
数多のスターを陰から支えてきた、一流のマネージャー。
アイドル、俳優、女優、スポーツ選手、政治家――。
表舞台に立つ人間の才能を見抜き、その魅力を引き出し、最高の舞台へ送り出す。
血の滲むような努力の末、いつしか「天才」と呼ばれるようになった玲司だったが、担当アイドルの紅白出場を見届けた夜、自宅で死亡する。
死因は――過労。
そして次に玲司が目を覚ましたのは、剣と魔法が存在する異世界。
それも、人間ではなく魔族たちが暮らす――魔界だった。
魔力もなければ、戦う力もない。
行く当てもなく魔界を彷徨っていた玲司は、誰もいない場所で一人、何度も同じ言葉を繰り返す銀髪の少女――セレナ・ヴァルディアと出会う。
極度のアガリ症で、人前ではまともに話すことすらできないというセレナ。
しばらく衣食住の面倒を見てもらうことを条件に、玲司は彼女を人前で堂々と話せるようにしてみせると約束する。
立ち方。視線。呼吸。声の出し方。言葉の選び方。
数多の才能を一流へ育ててきた玲司にとって、少女一人を舞台に立たせることなど難しい仕事ではなかった。
そして迎えた本番。
玲司の助力もあり、セレナのお披露目会は大成功を収める。
――そこで玲司は初めて知った。
彼女が現魔王の第二王女。
そして、一年後に次期魔王の座を争う――『魔王候補』の一人であることを。
候補者たちに、現魔王が告げた選定条件はたった一つ。
『一年後――総合力で余が決める』
武力なのか。
知略なのか。
実績なのか。
民からの支持なのか。
誰にもその真意が分からない中、玲司だけが笑った。
「要するに――なんでもありってことだろ?」
魔力はない。
剣も使えない。
それでも、人を輝かせることなら誰にも負けない。
これは、数多のスターを生み出してきた一流マネージャーが、三人の王女と最強の候補者が競い合う魔界で――次代の『魔王』をマネジメントする物語。