あらすじ
正方形の一辺と対角線は、同じ物差しでは測り切れない。
紀元前五世紀、ヒッパソスはそれを証明した。そして、正しさゆえに殺害された。
友メノンと笑い、師の娘ダモを愛し、数こそ世界の秩序だと信じていた青年は、発見を永遠に沈黙させるか、すべてを失って語るかを迫られる。
問いを抱いて海へ沈んだ魂は、二千年後、モーゼル川の船頭の息子ニコラウスとして目を覚ます。水を恐れる少年は、やがて「学識ある無知」を説くクザーヌスとなる。
数で語れないものは、存在しないのか。
語りえないものを、人はそれでも語れるのか。
古代ギリシアとルネサンス、二つの生涯を海がつなぐ、数学と友情と愛の歴史小説。
数学の予備知識はいりません。証明そのものより、それを抱えて生きた人間たちを描きます。
※実在の人物・史実・伝承をもとに再構成したフィクションです。