あらすじ
道路の真ん中に女の幽霊が立っている。
普通の怪異譚なら、問題は「どうやって消すか」だろう。
久瀬市役所では違う。
「そこ、市道ですか?」
まず道路台帳を確認する。
2026年。
怪異の存在が公に認められてから四半世紀。
幽霊、妖怪、呪い、祟り、空間異常――それらは「異常事象」として、すでに行政制度の中に組み込まれている。
久瀬市危機管理部異常事象対策室。
彼らが扱うのは怪異だけではない。
道路、土地、建築、福祉、予算、契約、SNS。
怪異によって壊れた「社会の側」を整理するのが仕事だ。
怪異は消えなくてもいい。
人が安全に暮らせて、管理する仕組みが決まれば、それも一つの解決になる。
これは怪異を退治する物語ではない。
怪異のいる社会を、どうにか明日まで動かす人々の物語だ。