あらすじ
家が没落し宿まで失った令嬢ヌリアは、無口な家主グンナルから枯れ井戸つきの離れを三十日だけ借りる。ところが共同井戸も干上がり、このままでは住民五十人が町を去るという。ヌリアが提案したのは、四十世帯の名布、丸石二百個、五十個の器を用意し、五つの手順で古井戸の水の精を呼ぶことだった。泥をさらい、名を縫い、落ちた家主まで結び目一本で引き上げて、ようやく戻る白湯と湯浴みと温かな食事。そして迎えた退去日、五十人の前で求婚されたヌリアは、それをなぜか「一生分の家賃の前払い」だと受け取ってしまい――。住民総出の計算違いから始まる、すれ違いのお話。