あらすじ
「アリシア・レーヴェンフェルト。お前との婚約を破棄する」
舞踏会の壇上で、王太子レオンは高らかに宣言した。理由は「陰気で城の栄華にふさわしくない」から。彼の隣には、幻を華やかに『盛る』ギフトを持つ聖女ミアがしなだれかかっている。貴族たちは扇の陰で嘲笑した――「陰気な壁の花がようやく捨てられた」と。
だが、公爵令嬢アリシアには誰も知らない秘密があった。彼女の前世は、日本の一級建築士。過労で命を落とし、この剣と魔法の世界に転生していたのだ。
前世の目で見れば、絢爛たる城を支える幻晶結界は、耐力壁がスカスカの『砂上の楼閣』。アリシアは十年もの間、地味を装いながら毎晩ひとりで崩れかけた魔法回路を補修し、城の栄華を裏から支え続けてきた。
そして今、彼女は静かに告げる。「では、この城の維持管理者の任も返上いたします」と――。
私が抜けたら、この城が保つのはあと三日。
忠実な侍女サラと共に城を後にしたアリシアは、新天地で理想の城を築くことを決意する。そこで出会ったのは、戦場で『砂漠の赤竜』と恐れられながら、図面を逆さに読む方向音痴な傭兵団長ガイ。凸凹な二人は、やがて「崩れない城」を目指して歩み始める。
前世の知識で砂上の楼閣を見抜く転生令嬢の、痛快建築ファンタジー。土台なき栄華は、いずれ崩れ落ちる――さあ、次はどんな蜃気楼を見抜きましょうか?