あらすじ
エイル・ハーウェルは、治癒魔法を使えない治療師だった。
彼に与えられた固有技能は《傷移し》。
患者の傷を治す代わりに、その傷がそのまま自分へ移る。
骨折を治せば、自分の骨が折れる。
毒を治せば、自分が毒に侵される。
呪いを移せば、自分の命まで削られる。
治療師としては、どう考えてもハズレの能力だった。
それでもエイルが治療師を続ける理由は一つ。
十二歳の弟ノアが、不治の《黒蝕の呪い》に侵されているからだ。
残された時間は、およそ半年。
弟の呪いをすべて自分へ移せば、ノアは助かる。
だが今のエイルでは、その瞬間に死ぬ。
ならば――死なない身体になればいい。
エイルは冒険者となり、《ラグナ地下迷宮》へ潜る。
傷を受け、毒に耐え、呪いを克服し、治療によって経験を積む。
そして《傷移し》もまた、少しずつ形を変えていく。
これは、誰かを治すたびに壊れていた青年が、
自分自身も生き残る治療師へと成長していく物語。