あらすじ
「少女と少女の愛は、何よりも美しいのよ」
昭和十二年──戦争の足音が近づく中、少女たちが少女でいられた、最後の季節。
元テニス部の王子様で、演劇部に転向した、藤代順子。
順子と同じクラスのどこか陰のある文学少女、綾瀬春江。
一冊の本をきっかけに、二人は交流を始める。文学を読み合わせ、言葉を交わしていくうちに、友情を超えた感情を自覚していく。
──これは、その感情に名前をつける物語。
本作は戦前の横浜・山手を舞台とし、エス(百合)をテーマにした「山手の百合」シリーズの三作目です。前二作が大正ロマンの時代背景だったのに対し、本作は大震災の復興後の昭和モダン(昭和10年前後)を時代背景とし、山手の女学校が舞台です。
「あるアマの物語」ではメイドの世界、「あるエスの物語」では音楽とピアノが少女たちの感情と絡み合ったように、本作では近代文学が少女たちの感情に影響をしていきます。
戦前という時代だからこそ生まれた、少女たちの純粋な物語。お楽しみいただければ幸いです。
【記述・引用について】
文中の記述は歴史考証をしていますが、小説としての演出的な誇張や省略があります。
作中の近代文学の引用は青空文庫もしくは各社文庫版から数行程度、引用符〈 〉あるいは文中で引用とわかるように表記し、作者名と題名を作中で明記しています。青空文庫では適宜現代かな遣いに変えている場合があります。
(『花物語』は国書刊行会・淳一文庫、『乙女の港』は現代かな復刻版より引用)