あらすじ
結婚三年目。
辺境伯夫人カミラの夕食は、いつも一人だった。
夫は名前すら呼ばない。
カミラが港の帳簿を整え、社交を回し、領地を支えていることを、夫は知らない。
知る気もない。
彼にとって妻とは、港に付属する管理機能だった。
ある夜、夫が若い女性を連れて帰ってきた。
仲良くしてやってくれ。
それだけ言って、夫は書斎に消えた。
残されたのは、カミラと、怯えた目の男爵令嬢ナディア。
本来なら敵同士の二人。
けれどナディアは、初日の夜に静かに言った。
ごめんなさい、と。
夫が三年間で一度も向けなかった誠実さを、この子は一言で見せた。
一緒に暮らすうち、二人はある事実に行き当たる。
夫にとって自分たちは、妻でも愛人でもなかったということ。
選ばれたのではなく、揃えられた。
同じ檻の中にいたと知った二人が、次に何を選ぶのか。
仲良くしろと言われた関係の先に待つものを、たぶん夫だけが想像できない。