あらすじ
丁寧すぎるくらい丁寧で、大人しくて読書が好き。楠すずな、二十二歳。取り柄なんて特にない、と本人は思っている。
そんなすずなを後輩の雨宮紬が旅行に誘った。行き先は地図にも載っていない山奥。そこで待っていたのは、異世界へと続く一つの石碑だった。
「先輩と一緒に行きたくて」
紬の想いに巻き込まれる形で、すずなは異世界へ足を踏み入れる。ところが、帰りの鍵はまさかの使い切り。「てへぺろ」で済まされる帰宅不能の危機。
帰るためには、この世界に伝わる「試練」を乗り越えるしかない。おとぎ話をモチーフにした五つの試練は、それぞれ過酷な代償と引き換えに規格外の力を与えるという。
すずなは自分が「ただの後輩の先輩」だと思っていた。けれど紬の危機に本能で応えるたび、その手は静かに、とんでもない力を振るっていく。
「……おい」
唯一それを止められるのは、紬の師匠になった見た目は幼いのに世界最強クラスの異世界人、エルフィだけ。
けれど紬にとって、一番の試練は魔物でも呪いでもなく――先輩に群がる令嬢も、受付嬢も、味方のパーティーメンバーさえも、全部が全部、恋敵に見えてしまうこと。
「先輩は私が守ります。誰にも渡しません」
やがて二人の想いは通じ合い、もう一人の日本人・心春との出会いを経て、日常には少しずつ新しい仲間が増えていく。それでも静かに近づいてくる、逃れられない大きな試練の気配――。エルフィをはじめとする世界最強クラスの仲間たちの力を借り、すずな、紬、そして心春は、来るべき日のためにそれぞれの牙を研ぎ始める。
無自覚系最強な先輩と一途で独占欲強めな後輩の、行き場のない帰り道。これは、おとぎ話の主人公になるはずじゃなかった不器用な先輩と、まっすぐすぎる後輩の物語。