あらすじ
松葉風花には、誰にも言えない秘密がある。
それは、半径五メートル以内にいる人間の『心の声』が、強制的に聞こえてしまうこと。
優しい笑顔の裏の苛立ちも。
爽やかな言葉の奥に隠された欲望も。
本人すら口にしない、ドス黒い本音まで。
全部、筒抜けだ。
だから風花は、人と深く関わらず、大学でも鉄壁のソロ生活を貫いていた。
……はずだった。
「風花ちゃん、待って!」
大学で再会したのは、可愛い子犬系の幼馴染・成宮貴成。
表向きは人懐っこく爽やかなのに、その頭の中は、
(誰にも渡したくない)
(逃げられないようにしたい)
(僕だけを見てほしい)
重い。怖い。近い。
全力で逃げる風花を、笑顔で追いかけてくる。
さらに現れたのは、品行方正で誰からも慕われる完璧な王子様・西条梓馬。
しかし彼の心の中も、
(くだらない)
(面倒だ)
(どうして彼女だけ、僕から逃げる?)
王子様どころか、かなり黒い。
しかも貴成と違って走って追ってこない。
逃げ道を読んで、先回りして待っている。
「こえーんだよー!」
逃げたい風花。
追いかけたい幼馴染。
静かに退路を塞いでくる王子様。
けれど、二人の醜い心を聞くうちに、風花は少しずつ気づいていく。
心に浮かんだ言葉と、その人が実際に選ぶ行動は、本当に同じなのか。
そして、自分の心だって綺麗なものばかりではないことに。
逃げて、立ち止まって、ときには自分から戻りながら。
人の本音がすべて聞こえる少女が、初めて「自分の心」で誰かを選ぼうとする、少しシリアスな追いかけっこ系大学ラブコメ。