あらすじ
現代日本から異世界へ召喚された青年・レン。
勇者として授かったのは、《鑑定》《収納》《干渉》――そして、なぜか説明のない謎のスキル《世界線観測》。
「まあ、異世界召喚ならこういうチートもあるか」
最初はそう思っていた。
敵の攻撃は妙に外れる。
欲しいものは都合よく見つかる。
絶体絶命でも、なぜか“うまくいく可能性”が見える。
どうやらレンの力は、ただ運がいいだけではないらしい。
そんな旅の途中、仲間の神官リナが命を落とす。
受け入れられなかったレンは、《世界線観測》の先に見えた――
「彼女が死ななかった世界」
へ手を伸ばしてしまう。
そして目を覚ましたとき、隣には生きているリナがいた。
奇跡は成功した。
……はずだった。
「レン? どうしたの?」
「いや……」
彼女の顔は分かる。
名前も分かる。
大切な仲間だったことも分かる。
なのに。
どうして彼女を救いたかったのか、その記憶だけが抜け落ちていた。
誰かを救えば、何かを忘れる。
より良い未来を選ぶほど、自分自身が少しずつ欠けていく。
しかも、勇者の力だと思っていた《世界線観測》には、どうも“正規のスキル”ではない気配があって――。
異世界チートだと思っていたら、どうやら世界そのものの仕様に触れてしまっていたらしい。
これは、世界を救うほど自分を失っていく勇者の物語。